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本の特送便 梅書房 > 渡辺治著作集 第3巻 戦後日本の治安法制と警察
978-4-8451-1717-8 渡辺治著作集 第3巻 戦後日本の治安法制と警察 新製品
渡辺治著作集 第3巻 戦後日本の治安法制と警察
¥5,500   在庫有り
渡辺治/著

旬報社

2021年12月

社会/社会学


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【内容】

天皇制国家の専制的支配を支えた治安法制や警察は戦後どう変貌したのか⁉


日本国憲法の下で、公安条例、破防法、秘密保護法などの戦後治安立法はいかなる特徴を持つに至ったか、戦後民主主義運動との攻防によって、いかにその発動を制限されたかを描く。

天皇制警察復活の野望を挫折させられた戦後の警察が、「市民警察」の顔で権限拡大をめざした過程、新自由主義改革による社会統合の破綻に直面して「治安の危機」を前面に立てて生き残りを図るさまを検討。


【目次】

Ⅰ 戦後日本の治安法制―戦前から戦後へ

 1 治安維持法と戦後民主主義

 2 政治的表現の自由法理の形成
   ―公安条例、破防法と憲法の対抗

 3 破防法はなぜできたか、いかに使われようとしているか?   
   ―オウム真理教と破防法

 4 なぜいま国家機密法なのか
   ―国家機密法案の背景と法的問題点

 5 秘密保護法制の歴史的展開と現代の秘密保護法


Ⅱ 戦後日本社会の形成と現代の警察

 6 現代警察とそのイデオロギー

  附論1 ファシズム期における天皇制警察の理念
   ―現代日本警察の源流

 7 現代日本警察の形成
   ―「近代化」から「日本化」へ

 8 80年代警察論

 9 風俗営業取締法改正と警察権の拡大

  附論2 警察関係資料紹介

  附論3 80年代の警察関係文献紹介


Ⅲ 日本社会の新自由主義的転換と現代警察の変貌

 10 グローバル化・「強い国家」政策と現代警察のねらい


[本巻の検討対象]


 本巻に収録したのは、第1巻、第2巻に検討した、天皇制国家期の治安法制の後を受けて、戦後の治安法制とその担い手である警察を検討した論文である。

 国民の自由を抑圧し、侵略戦争に動員した天皇制国家と明治憲法体制は、敗戦と戦後改革、日本国憲法の制定により、根本的な変容を被ったが、それに伴い、国民の自由抑圧を直接担ってきた治安法制、警察・治安機構も大きな変容を強いられた。

 戦後の治安法制と警察は、天皇制下の伝統的構造を継承しつつ、戦後の支配体制の変化に応じて変容を余儀なくされた。治安法制、機構の変容を促したのは、二つの要因であった。

 一つは、日本国憲法の強い人権保障規定が、天皇制下で「活躍」した治安立法や警察の単純復活を許さなかったことである。もう一つは、戦前の自由抑圧の経験を繰り返さないという戦後民主主義運動が、憲法の規定を武器に、治安法制の制定や運用に歯止めをかけたことであった。

 こうした要因によって、戦後治安法制や警察の「活躍」は大きく制限され、戦後の情勢に見合った運用を余儀なくされたのである。取締り当局は、講和後、戦後改革により失われた戦前明治憲法下の治安法制や警察権限の復活をめざしたが、その試みは挫折を余儀なくされ、戦後の枠組みを前提した治安法制や警察権限の拡張に転じたのである。一言で言えば、それは、「市民的公安」「市民警察」を前面に立てた権限拡張であった。

 もともと、国家にはグラムシが言うように、強制と同意の契機があるが、現代国家では、同意の契機が大きくなる。第6論文で、筆者が、ルイ・アルチュセールを引き合いに出したのは、アルチュセールがその点に強い関心をもっているからであった。

 治安機構、治安法制は言うまでもなく強制の機構であるが、そこにも同意の調達が不可欠となる。戦後治安立法や警察の運用の特徴は、そうした現代国家における同意の契機の比重の増大が、天皇制国家の解体と戦後民主化のもとで、劇的に現れたものであるように思われた。

 戦後治安法制のそうした「戦後」性を最も強く表したのが破防法の運命であり、また戦後警察の変貌であった。