本の特送便 梅書房 > > 渡辺治著作集 第4巻 戦後政治史の中の天皇制
978-4-8451-1718-5 渡辺治著作集 第4巻 戦後政治史の中の天皇制 | ||
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【内容】 「統治権総攬者」から「象徴」へ、日本国憲法によって天皇・天皇制はどう変わったのか―― 敗戦から昭和天皇の死去までの45年間の天皇・天皇制の歴史を、戦後の保守支配層が天皇にいかなる役割を求め、それに天皇がいかに対処し抵抗したかという視角から解き明かす。 日本の大国化の新たな段階において天皇制強化を求める動きと、日本国憲法、戦後民主主義との矛盾と葛藤を描く。 |
【目次】 Ⅰ 戦後政治史の中の天皇制 1 戦後政治史の中の天皇制 序 本書の課題と視角――現代天皇制論の課題 第一編 現代日本社会の構造と天皇制――「自粛」と「記帳」の社会学 第二編 戦後政治史の中の天皇制 第三編 現代天皇制の行方――「保守」と「反動」のギャップ Ⅱ 象徴天皇をめぐる諸問題 2 日本帝国主義の復活と天皇制分析の視角 3 戦後憲法史の中の天皇制 4 現代日本の民主主義・自由と本島発言 5 「本島事件」と現代日本社会の自由 6 これからの天皇制――大国日本の岐路 |
[本巻の検討対象] 本巻には、昭和天皇死去と天皇「代替わり」の前後に発生し日本を席巻した「自粛」、「記帳」の嵐、右翼の暴力の横行といった天皇現象を前に、戦後の天皇制、それら天皇現象の根拠などについて検討した著作、論文のうちいくつかを収録した。 1 第Ⅰ部には、一九九〇年に刊行した『戦後政治史の中の天皇制』を収録した。 戦後の天皇・天皇制については、「紀元節」復活、靖国神社国家護持、「明治一〇〇年記念」、元号法、首相の靖国神社参拝などの問題が浮上するたびに、天皇・天皇制に批判的な立場から、それを分析、検討した論稿が多数出されたが、それらの多くは、戦後天皇制は一貫して復活・強化の道を歩んでいるという視角からの分析が多かった。しかし、戦後改革と憲法のもとで、戦後の保守支配構造も大きく変わり、天皇・天皇制も激変した。何より変わったのは、近代天皇制国家において「統治権総攬者」として、統治の中心に座っていた天皇は、戦後憲法のもとで、一切の政治権力を剝奪された結果、もはや統治の中心ではなくなり、戦後の保守支配層の要請に応じて役割を変える、いわば戦後政治の「従属変数」になったことであった。その結果、戦後の天皇制を理解するには、支配構造全体の変化とその中で支配層が時々の支配のために求めた天皇の役割を分析することが必要ではないか―そういう視点から、戦後政治史の全体の中に天皇をおいて分析を試みたのが本書『戦後政治史の中の天皇制』である。 2 第Ⅱ部第2論文「日本帝国主義の復活と天皇制分析の視角」は、一九九〇年、天皇代替わり儀式の末尾を飾る大嘗祭の翌日に行なわれた歴史学研究会臨時大会での報告に手を加えたものである。本論文中でも指摘したように、報告は、戦後の支配構造の中での天皇制を歴史的に検討したうえで、八〇年代における天皇制の新たな強化策、代替わり儀式における伝統的天皇制の復活の企図は、日本の大国化の新たな段階にあって、国家主義的ナショナリズムを形成するというねらいから行なわれており、またそれに伴う矛盾をもっているという点の解明に焦点を当てて行なった。しかし、本論文では、報告ではごく短く触れるにとどめた、日本帝国主義復活と天皇制をめぐる論争史の総括に紙数を割いた。 3 第3論文「戦後憲法史の中の天皇制」は、八九年一〇月六日に行なわれた全国憲法研究会の秋季研究総会での同名の報告を原稿化したものである。これは、第Ⅰ部の著作、第Ⅱ部第2論文とは異なり、天皇代替わりが憲法学、とりわけリベラルな憲法学に突きつけた問題を扱ったものである。 4 第4論文「現代日本の民主主義・自由と本島発言」、第5論文「『本島事件』と現代日本社会の自由」は、いずれも、天皇が重体に陥った一九八八年、議会で天皇の戦争責任に言及した長崎市長本島等を一九九〇年一月右翼が銃撃、重傷を負わせた事件を、天皇制と市民の自由の侵害の問題として取り上げ、検討したものである。 5 第6論文「これからの天皇制―大国日本の岐路」は、明仁天皇即位から二年近く経った後の天皇制を素材にして、日本の大国化に伴う新たな天皇の役割を探った論文である。 |