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本の特送便 梅書房 > 渡辺治著作集 第7巻 政治改革と憲法改正 憲法をめぐる戦後史 その2
978-4-8451-1721-5 渡辺治著作集 第7巻 政治改革と憲法改正 憲法をめぐる戦後史 その2 新製品
渡辺治著作集 第7巻 政治改革と憲法改正 憲法をめぐる戦後史 その2
¥6,160   在庫有り
渡辺治/著

旬報社

2022年4月


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【内容】

冷戦終焉後、なぜ「憲法改正」と「政治改革」を求める巨大なうねりが起こったのか?

90年代に入り、なぜ「憲法改正」と「政治改革」を求める巨大なうねりが起こったのか?90年代に入って台頭した改憲策動と「政治改革」が、自衛隊の海外派兵と新自由主義政治を実行する政治体制づくりにあったことを、歴史的経緯を追って実証。


【目次】

刊行にあたって
解  説

Ⅰ 政治改革と憲法改正――中曽根康弘から小沢一郎へ

序章 政権交代・連立政権の歴史的意味
第一章 三つの「維新」――一九九〇年代の歴史的位置
一 「政治改革」の流行
二 小沢一郎のめざす「政治改革」の内容
三 「昭和維新」の時代――森恪と小沢一郎
  1 政党政治の腐敗への不満
  2 ワシントン体制下の国際秩序への不満
  3 既成政党内部からの「革新」派の台頭――森恪の改革構想
第二章 九〇年代改憲論の台頭とその新しい特徴 その1
はじめに――「政治改革」と憲法見直し論
一 湾岸戦争期における新しい改憲論の台頭
二 憲法見直し論の新しいねらいとレトリック
  1 自衛隊の海外出動の自由獲得
  2 「冷戦体制崩壊」論
  3 憲法前文のつまみ喰い
  4 国連の積極的援用
  5 小沢一郎の憲法見直し論の論理
三 支配層の苛立ち
  1 改憲方式の未確定
  2 国民意識・既存保守政治への苛立ち
第三章 九〇年代改憲論の台頭とその新しい特徴 その2
はじめに――九二年末以降の改憲論
一 小沢調査会答申案
二 明文改憲論の台頭
三 小沢一郎の方針転換
四 基本法方式の登場
 1 基本法方式の登場と性格転換
 2 基本法方式の浸透・受け入れ
 3 「平和基本法」提言のねらい
五 改憲論の担い手の広がり
  1 財界の改憲発言
  2 細川護熙・日本新党の改憲論
第四章 五〇年代改憲の挫折と「戦後政治」の形成
はじめに――「戦後政治」はいつできたか?
一 五〇年代改憲のねらいと特徴
  1 復古的・全面的憲法改正構想
  2 五〇年代改憲の「戦後」的性格
  3 「政治改革」との連動
二 五〇年代改憲の挫折
  1 国民意識の急速な変貌
  2 国民意識の変貌の背景
  3 「五五年体制」下での自民党議員の変化
  4 安保闘争による五〇年代改憲の挫折
三 「戦後政治」と「普通」でない国の形成
  1 「戦後政治」とはなにか?
  2 「普通」でない国家の形成
第五章 「普通の国家」をめざす改革とその障害物
はじめに――問い直された「戦後政治」
一 「戦後政治」改革台頭の要因
  1 アメリカの地盤沈下と防衛力増強要求
  2 日本資本の爆発的海外進出
  3 「戦後政治」の根本的改革の必要
二 中曽根「戦後政治の総決算」とその挫折
  1 改革派の二潮流
  2 中曽根内閣の登場
  3 日米同盟の形成――アメリカの下支え
  4 GNP一%枠の突破――障害物としての既存保守政治
  5 行・財政改革――大国としての責任を果たす国家体制づくり
  6 臨教審の教育改革――イデオロギー改革の困難
  7 「戦後政治の総決算」路線の挫折
  8 八〇年代改憲の昂揚と挫折
三 「戦後政治」の権威的改革に対する障害物
  1 平和と現状維持を志向する国民意識
  2 「戦後政治」の構造
  3 「現実主義」化を拒否する社会党
  4 アジア諸国の反発と警戒
  5 湾岸戦争でも消えなかった障害物
第六章 「政治改革」から憲法改正へ
一 中曽根康弘から小沢一郎ヘ――主役の交代
  1 中曽根康弘の転落
  2 中曽根康弘と小沢一郎――その政治思想上の共通性
  3 中曽根康弘と小沢一郎の決定的相違
二 「政治改革」の台頭
  1 九〇年代「政治改革」の原型
  2 リクルート事件と財界の「政治改革」要求
  3 自民党政治家による「政治改革」構想の登場
三 小沢一郎の「政治改革」論のねらい
  1 小沢一郎の「政治改革」構想の形成過程
  2 党の中央集権的権力の確立
  3 社会党を解体する――保守二大政党制へ
  4 地方分権論のねらい
四 社会党の改革と「政治改革」への合流
  1 「連合」・社会党はなぜ「政治改革」に賛同したか?
  2 「連合」結成と「政治改革」待望論
  3 山岸・新「連合」の政治戦略
  4 社公民構想の崩壊
  5 山岸「連合」と社会党の転換
終章 現段階と展望
一 ポスト「政治改革」の課題
  1 細川政権の成立と「政治改革」の実現
  2 自衛隊海外派兵と憲法見直し
  3 九四年四月政変の意義
  4 権威的体制をめざす諸改革
二 支配層内の諸分派と対抗勢力の再編
  1 帝国主義・新自由主義ブロック
  2 再編過程にある自民党
  3 「非保守」あるいは「社民・リベラルブロック」は存立しうるか
  4 権威的改革阻止の展望


あとがき

Ⅱ 中曽根康弘からみた戦後の改憲史
はじめに――中曽根康弘と戦後改憲史
一 五〇年代復古主義時代の中曽根の改憲構想
二 首相公選制と改憲――八○年代前半期の改憲論の転回
三 改憲消極主義の時代の中曽根憲法論
四 国際貢献と改憲――一九九〇年代における中曽根改憲論の復活
五 新保守主義改憲論への転換――二〇〇〇年代の中曽根改憲論

改題にかえて・本巻収録の書籍・論文執筆の頃


[本巻の検討対象]

1 第Ⅰ部『政治改革と憲法改正――中曽根康弘から小沢一郎へ』(以下、本書と呼ぶ)について

本書が対象として検討した時代は、第6巻に収録した『日本国憲法「改正」史』に直接継続する時代である。『日本国憲法「改正」史』執筆の直後から、そこでは全く予想できなかった、世界的規模での変動とそれに伴う国際情勢の激変、新たな改憲の動きが台頭した。

一九九〇年代に差し掛かる前後から、冷戦の終焉、イラクのクウェート侵攻、湾岸戦争、ソ連・東欧の崩壊、と国際情勢が激変し、それと連動して国内政治も激動の時代を迎えた。

この九〇年代初頭に支配層が推進し当代の政治対抗の焦点となった課題は、二つあった。一つは、湾岸危機から湾岸戦争にかけ、今や世界の唯一覇権国となったアメリカの圧力を受けて実施がめざされた自衛隊の海外派兵であり、その障害物として立ちはだかる憲法九条の改変という課題であった。もう一つは、それと並行して、中選挙区制度を小選挙区制に変えることを中心とした「政治改革」の課題であり、この「政治改革」は、政府・自民党、財界のみならず野党やマスメディアを巻き込んで大きなうねりとなった。

この二つの政治課題は、海部政権のもとで大きな争点として浮かび上がり、この課題の実現に対する――とりわけ「政治改革」に対する賛否をめぐって、自民党の分裂から九三年の総選挙を挟んで自民党一党政権の崩壊、細川政権の樹立、政権交代へとつながっていったのである。一九八〇年代後半までは、その継続が自明視されていた、自民党一党政権が音を立てて揺らぎ、崩壊したのである。

本書は、この二つの政治課題に焦点を当てて、激動の時代の政治過程を同時代史として振り返り、この時代がもった政治史、憲法史上の意義を明らかにしようとしたものである。

本書で筆者が明らかにしようとした点は、以下の四点であった。

第一は、九〇年代湾岸危機を契機に堰を切ったように噴出した、八〇年代までとは規模と勢いを異にした憲法見直し・改憲の動きを検討し、九〇年代改憲の特質とねらいを解明しようとしたことである。

第二の点は、改憲の動きと並行し、九〇年代初頭政治の大争点となった「政治改革」の真のねらいを明らかにしようとしたことであった。

第三の点は、以上に触れた、自衛隊の海外派兵体制づくり、政治改革という九〇年代初頭の政治課題を領導した人物として小沢一郎に焦点を当て、この政治転換期における小沢という個人の政治家の役割を浮き彫りにしたことである。

第四の点は、こうした自民党、小沢が主導した改憲、政治改革の動きに対し改憲はもちろんのこと、政治改革にも強く反対していた社会党が小沢に同調して「政治改革」に巻き込まれていく過程を、社会党を引っ張った「連合」の初代会長山岸章に焦点を当てて検討したことである。

第五点は、九〇年代初頭の動きを、改めて戦後政治史の中で位置付け、それが中曽根に端を発する「戦後政治」否定の動きの帰結として起こっていることを明らかにし、九〇年代改革の歴史的位置を確定しようとしたことである。

2 第Ⅱ部「中曽根康弘からみた戦後の改憲史」について

本論文の第一の意義は、中曽根康弘の改憲論の変化を通して、戦後の改憲史を――とりわけ、戦後の改憲論がいかに国民意識と衝突しそれを意識せざるをえなかったかに着目して、通観したことである。中曽根康弘が戦後の改憲史のほぼ全ての時期に活動し、かつ時々の改憲をめぐる情勢の変化に応じてその改憲論を変えていくという、極めて特異な人物であったこと、また中曽根改憲論の変化はおおむね、時々の改憲論の変化に対応していたため、その中曽根の改憲論に着目することによって戦後の改憲史の大きな流れを振り返ることができたからである。

本論文の第二の意義は、その改憲論に焦点は絞ったものの、中曽根康弘の改憲論の個性を浮き彫りにすることを通じて、戦後保守政治家としての中曽根論を試みたことである。中曽根は、復古的な改憲居士と捉えられがちであるが、彼は政治家としての出発点から、一貫して戦後の民主主義体制のもとでの国民統合に関心があったこと、その天皇制論は、驚くほど、復古色とは異なることを明らかにした。