本の特送便 梅書房 > > 渡辺治著作集 第8巻 現代改憲をめぐる攻防 憲法をめぐる戦後史 その3
978-4-8451-1722-2 渡辺治著作集 第8巻 現代改憲をめぐる攻防 憲法をめぐる戦後史 その3 | ||
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【内容】 「解釈改憲」から「明文改憲」へ。なぜ、安倍は九条改憲に執念を燃やしたのか。憲法九条一項、二項を残し、九条の二で「自衛隊の保持」を明記する安倍九条改憲の危険性を明らかにする。憲法九条は死んだのか?!日本の軍事大国化を阻み続けた憲法の力とは?九〇年代初頭から第二次安倍政権、菅政権に至る三〇年にわたる改憲の動きと、「九条の会」「市民と野党の共闘」による改憲阻止の攻防を歴史的に描く。 |
【目次】 刊行にあたって 解説 Ⅰ 二〇〇五年の改憲動向 1 憲法「改正」――軍事大国化・構造改革から改憲へ はしがき 一 いま、なぜ改憲か 二 憲法九条は現実をいかに変えたのか? 1 憲法の力とは何か? 2 憲法九条を具体化した運動の力 三 経済グローバル化と改憲のねらい 1 軍事大国化・構造改革推進と改憲 2 軍事大国への圧力と欲求 3 グローバル競争と構造改革 四 軍事大国化の完成と九条改憲 1 軍事大国化の第一段階と改憲回避 2 軍事大国化の第二段階――日米軍事同盟実行体制の確立 3 軍事大国化の第三段階と改憲の政治日程への浮上 4 九条改憲案の三つの類型 五 改憲の長期的なねらい――構造改革と改憲 1 なぜ改憲派は全面「改正」を主張するのか? 2 構造改革の諸段階と改憲 3 社会統合「再建」のための新たな国家構想の二つのタイプ 4 構造改革と関係する改憲案――二つのタイプの構想 5 教育基本法「改正」論との共通性 6 市民上層の形成――改憲案の社会的基盤 六 改憲はどこまで進んだか――国民投票法のねらい 1 改憲実行に立ちはだかる困難 2 国民投票法の何が問題か? 七 改憲を阻止するために 1 憲法九条を守ってきた闘いの到達点に対する確信を 2 平和運動のバージョンアップが必要 3 社会的多数派の結集で政治を包囲する 4 統一して闘うことの重要性――安保の教訓 八 自民党「新憲法草案」と急を告げる改憲 1 九・一一総選挙の結果と改憲の加速化 2 自民党「新憲法草案」のねらい――理想案から現実案へ 3 正念場となる二〇〇六年国会 あとがき Ⅱ 現代改憲をめぐる攻防の軌跡 2 政治改革・政界再編と憲法改正 はじめに 一 九〇年代憲法改正論の新たな特徴 1 憲法見直しのねらいの変貌 2 改憲論のレトリックの新しい特徴 3 改憲論の担い手の変容 4 明文改憲論と解釈改憲論の併存 二 九〇年代改憲の諸特徴の背景――八〇年代改憲挫折の教訓 1 八〇年代改憲の台頭の背景 2 「戦後政治の総決算」路線の挫折と障害物 3 国際情勢の激変と支配層の苛立ち 4 国民意識への対応 5「政治改革」先行論 三 「政治改革」から憲法改正へ 1「政治改革」の真の目的 2 六―七〇年代保守政治構造の打破 むすびにかえて 3 読売「憲法改正試案」の政治的意味とオルタナティヴの道 一 なぜ、今憲法改正試案なのか? 1 軍事大国化に依然として大きく立ちはだかる憲法 2 明文改憲か可能となる政治環境の現出 二 読売改憲案の眼目 1 必要なあらゆる場合における自衛隊の海外出動の保障 2 軍事大国に不可欠の権威的体制づくり 三 憲法研究者の責任――軍事大国化に対抗する道 1 読売改憲案と憲法研究者の態度 2 軍事大国化に対決する道はいかなる方向か (1) 負の国際貢献の即時廃止 (2) 憲法の平和主義的理念の徹底 (3) 北側大国の共同機関としての国連改革 (4) 国内の政治的民主主義の前進と人権の拡充 (5) 改革の担い手はだれか 4 憲法調査会の歴史的位置 一 憲法改正と憲法調査会 二 五〇年代憲法調査会の教訓 1 切迫していた五〇年代改憲 2 改憲実現のための機関としての憲法調査会 3 所期の目的を達成できなかった憲法調査会 三 憲法改正の現段階と調査会の新たな役割 1 九〇年代改憲の新たな性格 2 調査会の新たな性格と役割 3 挫折の教訓をふまえた調査会 小括 5 現代改憲動向の中の憲法調査会報告書 はじめに 一 二つの調査会――第一次調査会の挫折の教訓 二 現代改憲のねらいと憲法調査会への思惑 1 現代改憲の二つのねらいと明文改憲への逡巡 2 憲法調査会と改憲の政治課題への浮上 3 自民党改憲案に込められた二つの狙いと改憲案の動揺 三 憲法調査会報告でつくられた最大公約数 1 九条の改正に向けての意見集約 2 新自由主義改革推進のための効率的国家体制づくり 3 共同体、家族強化的規定の後退 四 調査会報告と改憲の次のステップ 6 自民党新憲法草案の登場と改憲問題の新段階 はじめに 一 現代改憲の三つの時期区分 1 現代改憲の三つの時期区分 2 時期区分の二つの基準 3 現代改憲の第一段階と改憲回避 4 九条改憲一本やりの段階 5 改憲第二段階への突入と改憲回避 6 構造改革による社会統合の破綻と改憲内容の変化 7 改憲論のなかへの新保守主義的構想の登場 二 改憲第三段階における自民党改憲案づくりのジグザグ 1 二〇〇三年総選挙による政党の決意表明 2 自衛隊のイラク派兵がもたらした改憲衝動 3 自民党の改憲草案づくりの当初のもくろみ――理想案づくり 4 自民党改憲派の「抵抗勢力」優位の構成 5 党憲法調査会での新保守的盛り上がり 6 自民党憲法改正草案対抗(たたき台)の内容 7 「大綱」への非難の大合唱と撤回 8 新体制の確立と見直すべき論点 9 日本経団連の改憲案――グローバル戦略と改憲 10 九条と九六条改憲への収斂 11 国会憲法調査会の最終報告 12 方針転換 13 総選挙の影響――旧型改憲派の退陣 三 自民党「新憲法草案」の内容とねらい 1 九条と九六条「改正」への焦点化 2 「前文」からの中曽根色一掃 3 「集団的自衛権」という言葉隠し 4 「新しい人権」規定の挿入 5 国憲法改正規定の緩和 四 民主党、公明党の変貌 1 民主党の変貌 2 民主党「憲法提言」 3 公明党の追随 五 改憲国民投票法のねらい 1 改憲実行法 2 「まっとうな国民投票法」をつくるために頑張るべきか 3 一括賛否か、条文別賛否か 4 眼目となる運動規制 5 マスコミ規制の動向 六 改憲衝動の強化と強まる矛盾 1 米軍再編と九条改憲 2 「格差社会」化の顕在化と教育基本法「改正」先行論 3 現代改憲の矛盾の拡大 (1) 米軍再編による基地強化の怒り (2) アジアにおけるリーダーシップと改憲 (3) 構造改革の破綻の顕在化 小括――運動の課題 (1) 国民投票法案が焦点 (2) 社会的多数派の声の顕在化――「九条の会」 (3) 九条改憲反対の政党間共闘 (4) 反構造改革のたたかい 7 現代改憲史と「構造改革」 はじめに――支配層の求めてきた二つの改革 一 現代改憲史の中の「構造改革」 1 経済グローバリゼーションと二つの改革 2 改憲と構造改革の内容的連接 3 改憲と構造改革の緊張関係 4 現代改憲史の時期区分と構造改革 二 現代改憲史の第一期と構造改革 1 改憲と構造改革浮上のズレ 2 改憲と構造改革の無関係 3 読売新聞改憲案の特徴 三 構造改革の展開と現代改憲史の第二期 1 構造改革の本格的展開 2 構造改革推進めざした改憲論 3 新保守派の改憲論の活性化 4 ナショナリズムの台頭 5 小林よしのりの新保守とナショナリズム 6 新保守派の改憲論――改憲規模の拡大 7 改憲の政治日程化と新保守派の思惑 8 新保守派の家族の保護、奉仕の義務化論 9 憲法改正草案大綱――新保守的、新自由主義的内容の混交 四 安倍政権と現代改憲史の第三期 1 自民党新憲法草案の登場 2 安倍政権登場と改憲の昂揚 3 安倍の改憲論の新保守的特徴 4 安倍政権の矛盾と困難 5 保守主流的立場の堅持 小括 ポスト安倍政権における改憲と構造改革のゆくえ 8 新自由主義構造改革と改憲のゆくえ――ポスト安倍政権の動向 一 安倍政権はなぜ改憲強行路線をとったのか 二 構造改革政治の矛盾の顕在化と安倍政権 三 安倍自民党はなぜ大敗し倒壊したのか? 四 ポスト安倍政権における新自由主義の手直し 五 改憲戦略の手直し――海外派兵恒久法へ 六 改憲政治、構造改革政治転換の始まり 9 安倍政権と現代改憲の新段階 はじめに 一 現代改憲の特徴 1 現代改憲の動因――アメリカの海外派兵圧力と憲法上の障害 2 現代改憲の四つの特徴 3 現代改憲史の時期区分 三 現代改憲の第一期 1 自衛隊派兵実行を求め解釈改憲先行 2 かつてない数の改憲案の発表 四 現代改憲の第二期 1 解釈改憲打破と明文改憲がもっとも現実化した時期 2 明文改憲の挫折と改憲の停滞 五 安倍政権の登場と現代改憲の第三期 1 解釈改憲路線 2 解釈改憲の新たな段階 3 明文改憲への執念 4 新自由主義改革の新段階 小括――戦後日本の岐路 10 新段階に入った改憲策動に終止符を はじめに――都議選から総選挙へ 一 安倍政権時代、二つの特徴 1 歴代政権とは規模を異にする九条破壊と改憲策動の時代 2 改憲を阻止する「市民と野党の共闘」が明文改憲を阻んだ時代 二 菅政権と日米軍事同盟の新たな段階への突入 1 アメリカの世界戦略の転換と対中軍事・覇権主義対決へ 2 日米軍事同盟の強化・新段階へ 三 菅政権における改憲の新段階――二つの改憲 1 菅政権は実質的改憲、九条破壊を押し進めている 2 菅政権における明文改憲の新段階――菅改憲の新方式 四 日米軍事同盟と改憲で日本とアジアの平和は実現できるのか? 1 東北アジアと日本の平和は、日米軍事同盟の強化、改憲では実現できない 2 東北アジアの紛争の武力によらない解決の枠組みづくりのイニシアティブ むすびにかえて――日本の進路をめぐる決着 Ⅲ 戦後史のなかの安倍改憲 11 戦後史のなかの安倍改憲 ――安倍政権のめざす日本から 憲法の生きる日本へ はしがき 第一章 安倍改憲に至る道――運動が改憲を阻み憲法を力にした 一 五〇年代改憲の挫折と憲法の定着 1 五〇年代改憲台頭の背景とねらい 2 五〇年代改憲構想の二つの柱 3 五〇年代改憲の最初の挫折と自衛隊合憲解釈の要請 4 六〇年安保闘争による五〇年代改憲の挫折 ――国民が憲法を選び直した! 二 明文改憲断念の三〇年――軍事化阻む壁となった九条 1 自民党政治の転換と改憲消極政策 2 平和運動の昂揚と自衛隊の活動を制約する政府解釈の形成 三 冷戦後、自衛隊の海外派兵の企図と改憲第二の波 1 アメリカの一極覇権、海外派兵圧力と改憲の再台頭 2 既存政治体制を改変した「政治改革」 3 平和運動の陣営の変容と新たな隊列 4 自衛隊派兵をめぐる攻防と内閣法制局 5 PKO協力法から周辺事態法へ 6 小泉政権による自衛隊海外派兵強行 四 明文改憲の台頭と挫折――自衛隊海外派兵の停滞 1 九条明文改憲の動き 2 九条の会運動が改憲をまたしても挫折させた 3 改憲第二の波の挫折 第二章 安倍晋三はなぜ改憲に執念を燃やすのか? 一 安倍晋三が改憲に執念を燃やす理由 1 安倍と改憲執着の原点――岸信介の亡霊 2 安倍の改憲論 3 第二次安倍政権における改憲切迫の理由 二 解釈改憲をねらった安倍首相 1 第二次安倍政権の解釈改憲先行戦略 2 集団的自衛権限定容認へ 3 ガイドラインと安保法制(戦争法) 三 解釈改憲から明文改憲へ 1 九条は死んだのか? 2 九条の重し――その1・止まぬ安保法制違憲論 3 九条の重し――その2・安保法制の限界 第三章 安倍五・三改憲提言は何をねらうのか? 一 なぜ安倍は五・三改憲提言を出したのか? ――安倍改憲に立ちはだかった壁 1 五・三改憲提言の異様 2 安倍改憲に立ち塞がった壁――市民と野党の共同 3 共同がつくりだした二つの困難 二 五・三改憲提言の特徴とねらい 1 五・三改憲提言の特徴 2 五・三安倍提言のねらいは何か? 三 安倍改憲戦略の手直しと解散・総選挙 1 安倍改憲をめぐる情勢変化と解散断行への変化 2 安倍首相の解散・総選挙のねらい 3 総選挙の結果――その1・安倍首相のねらいは半分成功 4 総選挙の結果――その2・安倍首相の最大のねらいは失敗 5 決着はこれからに持ち越された 四 総選挙から自民党大会へ――安倍改憲に立ちはだかる困難 1 新たに立ちはだかる二つの困難 2 安倍首相の改憲戦略と誤算 3 自民党大会案をめぐるジグザグ 第四章 安倍九条改憲の危険性 一 安倍九条改憲の危険性 1 軍事組織が憲法に明記され、九条も憲法全体も変質 2 九条二項は死文化し、国民が信頼する自衛隊は変質 3 安保法制で海外での武力行使が認められた自衛隊が合憲となる 4 自衛隊明記論と緊急事態規定 二 九条改憲で、日本とアジアの平和は確保できるか 第五章 安倍改憲を阻む力――市民と野党の共闘の力 一 憲法は死んでいない 1 憲法は軍事化の最強の歯止め 2 「立憲的改憲論」の批判 二 かつてない市民と野党の共闘で安倍改憲を阻もう 1 「全国市民アクション」でかつてない共同を! 2 共同の取り組み、三つの力点 第六章 憲法の生きる日本への転換は野党連合政権で 一 安倍改憲阻止の力を梃子に安倍政治を変え、憲法の生きる日本へ 1 安倍改憲阻止の共同から安倍政治を変える共同へ 2 安倍政治を変えるには?――安倍政治に代わる選択肢 二 野党連合政権はなぜ必要か? 1 野党連合政権に対する異論――その1・野合論 2 野党連合政権に対する異論――その2・時期尚早論 3 安保闘争と政権構想 4 民主党政権の教訓から学ぶ 三 憲法のめざす日本の第一歩は野党連合政権で 1 野党連合政権を構想する土台となる政策合意 2 野党連合政権がめざす政治の三つの柱 第七章 憲法の生きる日本とアジアをめざして 一 憲法の生きる日本をめぐる二つの構想 1 連合政権下の日本とアジア 2 将来日本に関する二つの平和・安保構想 二 安保のない日本が拓く可能性 1 安保条約の見直し・廃棄 2 自衛隊の縮小・解体 むすびに代えて 解題・本巻収録の著書・論文の思い出 |
[本巻の検討対象] 本巻には、九〇年代初頭から第二次安倍政権、菅政権に至る、ほぼ三〇年にわたる期間の改憲の動きと改憲阻止の運動との攻防を検討した論稿をほぼ時系列に沿って収録した。一九八〇年代末までの改憲の動きを検討した第6巻『日本国憲法「改正」史』、九〇年代初頭に台頭した新たな改憲の動きを扱った第7巻『政治改革と憲法改正』に続く時期を扱っている点で本巻は、その続刊にあたる。 本巻が取り扱う、九〇年代以降三〇年にわたり断続的に続く改憲の波は、冷戦終焉による世界の構図の大変動に端を発したという点で同一の要因にもとづいており、期間は長いが一個のまとまった波とみることができる。しかもこの波は、現在においてもなお進行中であり、それどころか、改憲の危険性は、一層濃化している。そこで、本巻では、九〇年代以降の改憲を、一括して「現代改憲」と呼ぶことにした。 第Ⅰ部には、二〇〇五年に出版した『憲法「改正」―軍事大国化・構造改革から改憲へ』を収録した。二〇〇五年という年は、九〇年代以降に台頭した「現代改憲」の策動が一個の頂点に達し、その全貌を現わした時代であった。この年に執筆・刊行した『憲法「改正」』で、一応、現代改憲の全体像を検討することができたと考えられるため本巻冒頭に収録した。『憲法「改正」』の明らかにした点は以下の諸点である。 第一に、現代改憲の衝動を生み出した二つの要因を改めて指摘した。それは、冷戦終焉に伴う「自由」市場の拡大、経済のグローバル化、アメリカ一極覇権体制の形成に起因する日本の軍事大国化と日本多国籍企業の競争力強化を図った新自由主義改革が、それを妨げる憲法の改変の衝動を高めたことである。 第二に、軍事大国化と改憲の関係という視点からみると、九〇年代初頭以来の一五年は三つの段階に分けて考えられることを明らかにした。 第三に、新自由主義改革も、その遂行の特定の段階になって改憲論を生んだことを明らかにした。 第四に、明文改憲の実行には不可欠であるため二〇〇〇年代中葉から制定が浮上していた改憲手続法のねらいと論点を明らかにした。 第五に、自民党内でつくられた二つの改憲草案、党の憲法調査会で作成されていた「憲法改正草案大綱(たたき台)」と、実際に自民党内で採択された「新憲法草案」を検討し、「大綱」が廃棄されて、「新憲法草案」に収斂していく過程を分析した。 第六に、改憲反対運動の状況を検討し、その課題を指摘した。 第Ⅱ部には、一九九三年から二〇二〇年までの、現代改憲にとって画期となる出来事を扱った論稿と、現代改憲の総体的特徴を扱った論稿を収録した。 現代改憲三〇年の間で改憲を左右する画期となる出来事としては、政治改革、現代改憲を代表するような改憲案の登場、国会での憲法調査会の設置と活動、保守二大政党制の成立を梃子にした明文改憲の台頭、自民党新憲法草案の策定、「任期中の憲法改正」を掲げた第一次安倍政権の成立と改憲手続法の制定、安倍政権の倒壊から改憲の停滞、第二次安倍政権による改憲の新段階への突入、安倍政権後期におけるアメリカの世界戦略の転換に伴う日米軍事同盟強化と改憲のさらなる切迫化、などが挙げられる。また、現代改憲に共通する特徴としては、新自由主義改革の遂行に伴って新たな改憲案―新自由主義的新保守的改憲案が登場したことが挙げられる。 第Ⅲ部には、二〇一八年に刊行した、筆者の改憲関係の単行本としては最新の『戦後史のなかの安倍改憲』(以下『安倍改憲』)を収録した。第二次安倍政権による改憲、九条破壊を扱ったものであるが、同時にこれまでの改憲本―『日本国憲法「改正」史』や『政治改革と憲法改正』では正面から扱わなかった、改憲阻止の運動との対抗で改憲史を描くことを試みた。改憲の試みが、それに反対する運動によって挫折を余儀なくされた歴史でもあったことを改めて検証しようと思ったからである。本書で解明を試みたのは以下の諸点である。 第一に、第二次政権以降になって安倍晋三が追求した改憲の新たな試みに焦点を当てて検討したこと。 第二に、改憲史を改めて、改憲勢力と運動側の攻防として描いたこと。 第三に、筆者が、これまで、正面からの検討を十分してこなかった九条をめぐる政府解釈を、浦田一郎などの研究に学びながら、行なったこと。 第四に、改憲に代わる、九条にもとづく平和の構想を、改めて探究したこと。 |